センター長あいさつ

 がんという病気は日本では2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると報告されている身近な病気です。当院の属する東近江医療圏においては、最後までがん治療が行われる率、いわゆる治療完結率が低いことが課題とされています。このことは、住民の皆さんががん治療を受けるために遠方の病院へ通っているという事実の現れです。

 治療完結率向上の対策のひとつとして、2022年夏から手術支援用ロボットda Vinci Xiの運用を開始します。これにより他院へ依頼していた泌尿器科、外科、産婦人科領域のロボット支援腹腔鏡手術を当院で受けることが可能となります。

 がんは、診断されると長い年月の通院が必要になります。ですから地元の病院で診断と治療を受けることが最も良い方法です。当院には県下でも有数の治療実績があります。これまで東近江医療圏の皆さんが遠方の病院へ出向いて治療を受けられていたのは、当院からの情報発信不足も一因であると考え、このホームページに実績を掲載しました。

 もし東近江医療圏でがんになっても当院で安心して治療をうけられるよう、最先端医療や世界的標準治療を提供できる体制と設備をさらに充実させたいと考えています。

がん診療支援センター長(泌尿器科主任部長) 牛嶋 壮

がん診療支援センターについて

「滋賀県地域がん診療連携支援病院」について

 

 近江八幡市立総合医療センターは、滋賀県がん対策推進計画に基づき「滋賀県地域がん診療連携支援病院」の指定を受けています。これは国が指定する地域がん診療連携拠点病院と協力し、地域のがん診療を担う中心的な医療機関として、専門的ながん医療の提供を行うよう滋賀県知事より指定されたものです。

⇒滋賀県ホームページはこちら

概要

専門的ながん診療機能の充実をこれまで以上に推進させるため、当院では2018年12月1日より「がん診療支援センター」を開設しております。

「がん診療支援センター」は、がん診療に関わる「がん化学療法部門」、「がん患者サポート部門」と「キャンサーボード(適切ながん治療提供のための病院内検討会)」を統括し、東近江医療圏域の中核病院として、また市民のための病院として、発がん予防、がんの早期発見、質の高い最新の手術や適切な化学療法等の提供を目指して、診療体制の充実、研修の実施や患者さんへの相談支援および情報提供を行っています。

病院の臨床指標

がん登録データ

がん診療について

 当院では多くの患者さんに多岐にわたるがん治療を行っており、がんの標準治療のうち放射線治療以外のほとんどは当院で受けることができます。放射線治療や遺伝子検査などについても、滋賀医科大学や京都府立医科大学、県立総合病院と連携をとっていますので、スムーズな対応が可能です。

1.診療実績

がんの手術

  2019年 2020年 2021年
胃がん手術 36 50 40
 うち腹腔鏡手術 31 47 39
大腸がん手術 67 69 93
 うち腹腔鏡手術 58 60 86
肝臓がん手術 11 11 9
 うち腹腔鏡手術 6 4 9
胆のう・膵がん手術 13 15 7
 うち腹腔鏡手術 2 6 2
乳がん手術 42 41 39
子宮頸がん手術 0 1 10
 うち腹腔鏡手術 0 0 6
子宮頚部円錐切除術 28 12 9
子宮体がん手術 2 3 14
 うち腹腔鏡手術 0 0 2
卵巣がん手術 0 10 11
 うち腹腔鏡手術 0 0 2
腎・腎盂尿管がん手術 22 9 20
 うち腹腔鏡手術 21 9 19
膀胱がん手術 74 101 86
前立腺がん手術 1 1 0
精巣がん手術 5 5 2
甲状腺がん手術 3 10 6
喉頭がん手術 3 0 1
鼻・副鼻腔がん手術 1 0 2
口腔がん手術 1 4 4
咽頭がん手術 0 0 0
唾液腺がん手術 1 0 0

がんの内科的治療

  2019年 2020年 2021年
内視鏡的切除
 食道 5 5 14
 胃 39 44 46
 十二指腸 1 1 0
 大腸病変 32 35 28
肝がん治療
 TACE(肝動脈化学塞栓療法) 25 25 25
 RFA(ラジオ波焼灼療法) 2 3 5

化学療法

  2019年 2020年 2021年
肝胆膵がん 327 416 543
胃がん 348 278 220
大腸がん 532 599 538
乳がん 379 460 356
食道がん 16 28 14
血液内科 1862 1583 1793
泌尿器科 356 362 448
産婦人科 115 116 200
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 31 23 45
脳神経外科 0 13 79
その他 24 4 33
合計 3990 3882 4269

⇒化学療法のレジメンはこちら

専門医・認定医数

        がん治療認定医(日本がん治療認定医機構)        10名
       (消化器内科2名、血液内科、消化器外科2名、乳腺外科、産婦人科、耳鼻咽喉科・頭頸部外科2名、泌尿器科)
        消化器がん外科治療認定医                                  2名
        婦人科腫瘍専門医                                              1名
        日本頭頚部外科学会頭頚部がん専門医                    1名
        日本内視鏡外科学会技術認定医                             3名(大腸・胃・泌尿器)
        日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医                    1名
        日本泌尿器内視鏡学会技術認定医                          2名
        泌尿器ロボット支援手術プロクター                       1名

2.緩和ケアについて

 「緩和ケア」にどのようなイメージをもっておられるでしょうか。
 「緩和ケア」=がん終末期ケアと誤解されていることが多いのですが、「緩和ケア」とは生命を脅かす病気による問題に直面している患者さんとその家族に対して、病気の初期段階からがん治療と並行して受けるケアです。がんの痛みのほか、がん治療中に経験する苦痛を伴う症状や様々な不安・心配事など、心のつらさを和らげるお手伝いをします。また、がんと診断されたことにより生じる社会的な問題への対応についても、一緒に考えて解決を目指します。

 当院では週に1回緩和ケアカンファレンスを行っています。対象となる患者さんは当院で緩和ケア外来の診療を受ける方、もしくは入院中で上記のような何らかの問題を抱えている方について医療者でカンファレンスを行って、より一人一人の患者さんにあったケアを提供することで、家族とともにできるだけ安楽に過ごせることを目指しています。

 当院では、週1回ヴォーリズ記念病院の医師による緩和ケア外来を開設しています。ホスピスの利用を考えている方や緩和ケアについてより専門的なケアを受けることが望ましい方、希望される方を対象に診察しておりますので、希望される場合は主治医にご相談ください。

 ⇒ヴォーリズ記念病院緩和ケア科についてはこちら

3.外来化学療法室

⇒外来化学療法室についてはこちら

4.キャンサーボード

キャンサーボードとは

 直訳するとCancer(がん)Board(評議委員会)となります。厚生労働省の、がん診療連携拠点病院の整備に関する指針によれば、「手術、放射線診断、放射線治療、化学療法、病理診断及び緩和ケアに携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の専門を異にする医師等によるがん患者の症状、状態及び治療方針等を意見交換・共有・検討・確認等するためのカンファレンスをいう」とされ、多職種のスタッフが個々の患者さんの、がんの診断治療に関わる討議を行う場です。

 当院では、1996年2月26日に開始した「内科・外科合同カンファレンス」を前身として、現在は滋賀県地域がん診療連携支援病院の立場から、2012年以降は発展的に「キャンサーボード」として、消化器内科医、外科医、産婦人科医、耳鼻咽喉科・頭頚部外科医、泌尿器科医、放射線科医、病理診断科医、消化器内科・外科病棟師長、化学療法室看護師、緩和ケア担当看護師、化学療法薬剤師の参加のもと、月1回開催し、各回5-6症例を討議しています。

キャンサーボードの目的・効果

 個々の専門的スタッフの立場からの意見を集約することにより、個々の患者さんに質の高い医療の提供を行い、これをスタッフ間で共有することができます。また、手術後の患者さんの振り返りにより学術的進歩、経験値の蓄積が得られます。

キャンサーボードの展望

 現在は院内スタッフのみの参加で開催しています。将来的には東近江医療圏から広くご参加頂ければ更に充実したものになり、より医療の質を押し上げると期待しています。

がんのご相談

1.がん相談のご案内

解説と相談方法

 がん相談窓口では、患者さんやご家族、あるいは地域住民の方々からがんに関する相談を受けています。国立がんセンターの研修を受けた看護師・医療ソーシャルワーカーが相談に応じています。

 がん相談に来られる方の話しをうかがうと「こんな悩みを聞いてくれるところがあったなんて」という声が多く聞かれます。治療と暮らし(仕事、家事、育児、介護など)の両立、医療者や職場。家族との人間関係、医療費や生活のこと、がんが進行して治療が難しくなってからの過ごし方などの不安や疑問の相談に応じています。相談に来られた方と必要な情報を一緒に探し、その方に応じた情報の提供を行います。2018年度より外来化学療法室と患者総合支援課の看護師ががん相談を担当していますので、どうぞお気軽にご利用ください。

活動実績

   2019年 2020年 2021年
相談件数 76 78 104
相談内容(複数回答) 2019年 2020年 2021年
がんの治療 19 20 24
がんの検査  2 2 0
症状・副作用・後遺症 11 13 29
セカンドオピニオン 1 2 3
医療機関の紹介 3 4 2
在宅医療  3 11 7
ホスピス・緩和ケア 12 12 12
食事・服薬・入浴・運動・外出など 2 2 2
介護・看護・養育 2 4 5
社会生活(仕事・就労・学業) 5 2 5
医療費・生活費・社会保障制度  25 1 11
補完代替療法 1 0 1
生きがい・価値感 1 0 2
不安・精神的苦痛 17 17 19
医療者との関係・コミュニケーション  8 6 8
患者-家族間の関係・コミュニケーション 4 10 6
友人・知人・職場の人間関係・コミュニケーション 1 1 1
その他 4 16 17
合計 121 126 154

冊子「滋賀の療養情報」

 冊子「滋賀の療養情報」には、病気や治療、地域の支え合いの情報、経済的・社会的な制度など療養に役立つヒントが掲載されています。

 PDF版はこちら.pdf(PDF 4.9MB)

2.がん患者・家族のためのサロン

がん患者サロンとは

 がん患者さんやご家族同士、同じような経験や悩みなどを抱える者同士が語り合える場所です。語り合うことで気持ちが楽になり、療養生活を快適に送る知恵を得られることがあります。

 がん患者サロンでは、がん患者・がんの経験者やその家族で、カウンセリングなどの研修を受けたピアサポーターが進行役を務め、参加者の語り合える場所を無理なく作れるように配慮されます。また、がん患者サロンは秘密厳守がルールとなっており、安心してこころの内を話すことができます。通院されている病院のサロンはもちろん、その他のサロンにも参加できます。参加費は無料で、事前申し込みのない方でも大歓迎です。

当院のがん患者サロン「よしぶえ」の案内
  場所:外来4ブロック5-9指導室
  時間:13~15時
  月1回開催しています。 お問い合わせは、患者総合支援課(がん相談支援)まで

3.セカンドオピニオン外来

⇒セカンドオピニオンについてはこちら

がんの研究

1.臨床試験・治験の実施状況

・OHK-10161(アザシチジン)の生物学的同等性試験(血液内科)