地域医療の中心的病院であり続けるために

近江八幡市立総合医療センター 院長 白山 武司

 この3年間、新型コロナウイルス感染症に悩まされてきましたが、ようやく管理が緩和される方向です。しかしながら、ウイルスの感染力や病原性が突然なくなるわけではありません。病院には、体力の弱くなった方や感染に弱い方がたくさんおられます。今しばらくは、あわてず、病院に来ていただく際の感染予防やマスク着用など、他の患者さんやご家族のことを考えた行動を続けていただきますよう、よろしくお願いします。当院でも少しずつ面会などの緩和を検討して参ります。

 さて、医師の働き方改革が本番を迎えます。これまで、心配なときにはいつでも、どこでも、希望する病院にかかることができましたが、医療関係者の長時間勤務に支えられてきた一面があります。一般企業ではすでに実施済みですが、超過勤務時間の短縮にむけて、病院にも規制がかかるようになります。当院でも自動化や効率化を進めていきますが、数名の医師が交代で治療にあたったり、看護師や技師が治療の一端を担う、など、これまでとは違う姿に変わっていきます。当然、安全確実に実施できるよう、研修などは十分に行っていますので、ご安心ください。
 また、国全体の取り組みで、最初に受診する医療機関とその後さらに高度な医療を受ける病院とを明確に区別する方向に動いています。紹介状をお願いしたり、地域の医院での診療継続をお願いする場面が増えると思います。これも地域の診療所と当院の複数の担当医で見ていく、という観点に立って、ご了解をお願いいたします。

 一方で、当院が地域で果たす役割は何も変わりません。東近江地域における中核病院として、さまざまな疾患に悩む方々に高度な医療を提供し、また救急救命、災害、周産期母子医療、地域医療などの拠点として活動を続けていきます。近隣の医療機関とも協力して、当院ならではの医療が十分に提供できるよう、努力してまいります。また医師・看護師・薬剤師をはじめ、救急隊等さまざまな職種の研修も受け入れ、実践的な教育も行います。

 「救急を断らない」をモットーに、ヘリコプターによる救急搬送を含めて、救急車受け入れは年間約5000件あり、急性心筋梗塞や脳卒中、重症骨折などが多くを占めています。NICU、GCUの整備を背景に高リスク分娩を受け入れ、近隣の産科小児科の減少をカバーして当院での出産数は少子高齢化にも関わらず年々増加しています。ダビンチシステムを導入し、消化器外科、泌尿器科、婦人科を中心に、ロボット操作によって人間の手が届きにくい細かい動きを使ってより高度な手術が進んできました。CT付き血管造影室の機器も更新し、脳梗塞や肝臓がんなどの治療も、より充実するようになります。

 当院には、これまで職員が一丸となってみんなで築き上げた「地域貢献」の気風があり、今後とも地域における重責を担うべく活動していこうと思います。地域住民の皆様、診療所等の医療機関の皆様、本当に日頃大変お世話になっておりますが、今後ともご支援をよろしくお願いいたします。

2023年4月