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コラム

脳血管障害について


くも膜下出血の原因の多くはくも膜下腔にある血管にできた脳動脈瘤が破裂することにより起こります。この脳動脈瘤は成人の4%程度の方が有しています。多くの方は破裂を起こさずに経過されますが、くも膜下出血は年間当たり約1万人に1~2人に発生します。50~60歳代の方に多く、発症すれば30~40%の方が亡くなってしまう恐ろしい病気です。症状としては突然の激しい頭痛が特徴で、「バットやハンマーで殴られたような痛み」などと表現されることもあります。重症の場合には意識障害も起こります。最重症になると発症してすぐに生命に関わります。一旦破裂した脳動脈瘤は数日以内に再破裂をしやすく、再破裂をするとさらに助かる可能性は低くなります。くも膜下出血の治療の最も重要なことは、再破裂しないように処置をすることです。再出血予防の治療には2つの方法があります。一つは、開頭によるクリッピング術、もう一つは、カテーテル手術(コイル塞栓術)です。クリッピング術とは動脈瘤の根っこを小さなチタン製のクリップで挟んで、動脈瘤に血流が入らないようにします。一方、コイル塞栓術は、カテーテルを用いて瘤の内部にコイルと呼ばれる細くて柔らかいワイヤーを充填し、動脈瘤の中に血流が入らないようにします。クリッピング術とコイル塞栓術にはそれぞれに利点、欠点があり、どちらが適しているかは多くの要素を考慮して判断する必要があります。数日以内の再破裂が多いので、状態に応じて発症から2日以内に手術をします。くも膜下出血のあとに遅れて脳の血管が一時的に細くなることがあり、これを『脳血管攣縮』と呼びます。この脳血管攣縮の程度が強いと脳に血液が流れにくくなり脳梗塞をきたす場合があり、後遺症が残ります。この脳血管攣縮を少しでも軽減するために様々な治療薬が開発され、以前に比較して有効な治療薬も開発されており、当院でも患者さんの回復に全力を尽くしております。

ほとんどの場合くも膜下出血はCTで診断が可能です

手術前の3D-CT:前交通動脈瘤が明瞭に描出されています

中大脳動脈瘤にクリッピング手術を施行後の3D-CTです

くも膜下出血の治療成績は発症時の状態が強く影響します。当科での過去10年間の治療成績(別掲)では発症時に軽症から中等症の大半の患者さんで良好な経過で、クリッピング術あるいはコイル塞栓術を行った方の70%以上の方が自宅での生活が出来る程度まで回復されています。しかし非常に重症のくも膜下出血の方では、積極的な治療を行っても救命できない場合や、重い後遺症を残してしまうことがあります。

脳ドックなどで発見される未破裂脳動脈瘤に対しては血圧管理などの経過観察を基本としますが、上記のように破裂してくも膜下出血をきたすと生命の危険性や後遺症を残してしまうこともありますので、年齢や部位、脳動脈瘤の大きさ、破裂の危険性などを考慮し、厳密に適応を判断しご本人とリスクを含めた説明を行い手術を希望される方に対しては手術治療を行っています。
脳出血は基本的には保存的な薬物治療と早期よりリハビリテーションをおこないます。出血が多い場合には救命目的の開頭血腫除去術や、最近ではより低侵襲の内視鏡下血腫吸引除去術を行っています。
脳梗塞に対しても当科は積極的に治療を行っております。脳保護治療と早期よりのリハビリテーションをおこないます。発症から短時間しか経過していない場合には積極的にt-PA治療(静脈投与による血栓溶解療法)や、近年では積極的に血栓回収療法を行っており、著明な改善が得られる方もおられます。また頚動脈の高度狭窄を認める方では再発予防目的に頚動脈内膜剥離術頚動脈ステント留置術を行っています。また適応のある方では再発予防に血管吻合術などの手術を行っています。

頸動脈ステント留置術を施行した症例

(術前): 脳梗塞で発症した内頚動脈の高度狭窄症の方です

(ステント留置後): 内頚動脈の狭窄は著明に改善しています

内頚動脈狭窄症に対して内膜剥離術を施行した症例

(術前)著明な狭窄を認める

(術後)血管の狭窄が良好に改善

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